27. ろばは道にうずくまってしまいました。 バラムはとうとう頭にきて、ろばをひっぱたきました。
28. このとき急に、ろばが口をききました。 神様がそうなさったのです。 「どうして三度もぶつんですか。」
29. 「おれをばかにしたからだ。 剣があれば、切り殺してやるところだ。」
30. 「でも、これまでに、私が一度でもこんなことをしたでしょうか。」「いや、ない。」
31. その時バラムの心の目が開き、剣を抜いて行く手に立ちはだかっている神様の使いが見えました。 バラムはびっくりして、その方の前にひれ伏しました。
32. 「なぜ、ろばを三度もぶったのか。 おまえが破滅の道を進んでいるので、止めに来てやったのだ。
33. ろばはわたしを見て、三度ともしりごみした。 そうでもしなかったら、今ごろは、ろばは助かっても、おまえの命はなかったのだぞ。」
34. 「私がまちがっておりました。 お赦しください。 神様のお使いがおいでになろうとは、気がつきませんでした。 これ以上進むなと申されるなら、引き返します。」
35. 「いや、このまま行け。 ただし、わたしが命じることだけを言うのだ。」バラムは一行と旅を続けました。
36. バラク王は、バラムが途中まで来ていると聞いて待ちきれず、わざわざ国境のアルノン川まで迎えに出ました。
37. 「なぜ、こんなに遅くなったのかね。 絶対に悪いようにはしないと約束したのに、信じてくれなかったのか。」
38. 「王様、おおせに従い、参るにはまいりましたが、残念ながら、神様が命じることしか言えません。 申し上げることはそれだけです。」
39. バラムは、王といっしょにキルヤテ・フツォテに行きました。
40. 王はそこで、牛と羊をいけにえとしてささげ、バラムや使いの者たちにも、いけにえ用の動物を与えました。