2. たちまち、「サムソンを見かけた」という噂が広まり、警備体制が敷かれました。 町の人も大ぜい、彼の帰りぎわを押さえようと、町の門で夜通し待ち伏せました。「明け方になったら、見つけ出して殺してしまおう」と思っていたのです。
3. 真夜中まで女と過ごしたサムソンは、そのあと町の門まで行き、門を二本の門柱もろとも引き抜くと、高々とかつぎ上げ、ヘブロンの向こう側にある山のいただきまで運んで行ったのです。
4. そののちサムソンは、ソレクの谷に住むデリラという女を愛するようになりました。
5. ペリシテ人の五人の領主がじきじき彼女を訪ね、「サムソンの力の秘密を探ってくれないか。 どうしたら、あいつを鎖で縛り上げてやれるか、ぜひとも知りたいのだ」と頼みました。それも、ただではありません。 「この仕事を引き受けてくれたら、めいめいが三十万円ずつ出そう」と約束したのです。
6. デリラはサムソンに、力の秘密を打ち明けてほしいと頼みました。「ねえサムソン、どうしてそんなに強いの。 教えてちょうだい。 あんたを捕まえるなんて、できっこないわね。」
7. 「そうだな。 真新しい七本の弓弦で縛られでもすれば、おれも人並の力しか出せまいな。」
8. 例の領主たちは、さっそく七本の弓弦を持って来ました。 デリラは眠っているサムソンを縛り上げ、
9. 隣室には幾人かを潜ませておいて、大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が来たわ!」するとどうでしょう。 サムソンは、弓弦を木綿糸のように断ち切ってしまったのです。 こうして彼の力の秘密は、だれにも知られずじまいでした。
10. するとまた、デリラはサムソンにからみました。 「あたしをからかったのね。 うそつき。 ねえ、どうしたらあんたを縛り上げることができるのか、教えてちょうだい。」
11. 「わかったよ。 まだ使ったことのない新しい綱で縛ってみろ。普通の人と同じぐらいの力しか出せないよ。」
12. それでデリラは、サムソンが眠ったころを見はからって新しい綱を取り出し、縛り上げました。 前と同じように隣室に幾人かを潜ませ、またも大声で叫んだのです。「サムソン! ペリシテ人が捕まえに来たわ!」ところがサムソンは、まるでくもの巣でも払うように、綱を腕からはずしてしまったではありませんか。
13. 「また、あたしをばかにして、とんでもないでたらめをおっしゃったのね。 ねえ、お願い。 ほんとうのことを教えて。 どうしたらあんたを縛り上げることができるのよ。」「ああ、わかったよ。 おれの髪をおまえの機に織り込んでみるんだな……。」
14. デリラはサムソンが眠ったのを確かめ、言われたとおり、彼の髪の毛を機に織り込み、悲鳴をあげてみせました。 「ペリシテ人よ!サムソン!」 サムソンは目を覚ますと、髪をぐいと引っぱり、機をこわしてしまいました。
15. デリラは泣き出しそうな声で言いました。 「よくも、愛してるなんておっしゃれるわね。 ちっとも私を信用してくださらないくせに。 もう三度もだまされたわ。 それでもまだ、力の秘密を教えてはくださらないのね。」
18. ついにほんとうのことを白状させたのです。 デリラはさっそく、ペリシテ人の五人の領主を呼びにやりました。「もう一度お越しください。 今度こそまちがいありませんわ。」彼らは約束の金を用意してやって来ました。