8. 「これはこれは、ヨセフの父上、だいぶお年のようだが、幾つにおなりかな?」
9. 「おかげさまで百三十になります。 苦労が多く、こんなに老いぼれてしまいました。 先祖には、もっともっと長生きした者も大ぜいおります。」
10. こう言って、もう一度あいさつすると、ヤコブは王の前を下がりました。
11. ヨセフは王の命令どおり、一族にエジプトでも最上のラメセスの地を割り当てました。
12. それぞれの家族数に応じて、食物も与えました。
13. そうしている間も、ききんはますますひどくなり、カナンばかりか、エジプトでも飢える人がたくさん出てきたのです。
14. ヨセフはどんどん穀物を売り、エジプトとカナンに出回っていた金を、ほとんど全部と言っていいくらい吸い上げてしまいました。 王の金庫には金がうなるほどたまる一方です。
15. すっからかんになった人々は、ヨセフに泣きつくしかありません。「穀物を売っていただこうにも、財布は空っぽです。 かといってこのままじゃ、飢え死にするしかありません。 後生ですから、食べ物をお恵みください。」
16. 「わかった。 それなら家畜を差し出すがいい。 引き換えに食糧をやろう。」
17. 背に腹はかえられません。 人々は食べ物を買うために、家畜を連れて来ました。 まもなく、エジプト中の馬、羊、牛、ろばが王のものになりました。
18. 翌年になると、人々はまたやって来ました。 「もう金はおろか、家畜もいません。 全部あなた様に差し上げました。 残っているものと言えば、自分の体と土地しかありません。
19. このままじゃ、死ぬのを待つだけです。 どうぞ、私どもと土地を買ってください。王様の農奴となりますから、食糧と引き換えにしてください。 そうすれば、なんとか生きのびられるし、土地を耕すことだってできますから。」