2. そのとたん、こらえきれなくなって、あたりはばからず男泣きに泣きだしました。 泣き声は屋敷中に聞こえ、その知らせがすぐ王の宮殿にまで伝えられるほどでした。
3. 「兄さん、ヨセフですよ。 ほら、よく見てください。 お父さんは元気ですか。」 びっくりしたのは兄弟たちです。 あっけにとられて、口をきくこともできません。
4. 「さあさあ、そんな所にいないで、ここへ来てください。」 そう言われて、一同はそばへ寄りました。 「お忘れですか。 ヨセフですよ。 あの、エジプトへ売られた弟ですよ。
5. だけど、そのことで自分を責めないでください。 何もかも神様のお取りはからいだったのです。 私がここへ来るようにしたのも、ほんとうは兄さんたちでなく神様なのです。 こんなふうに兄さんたちを助けることができるようにしてくださった。
6. もうこれで丸二年もききんが続きましたが、まだまだ収まりませんよ。 あと五年はこのままです。 その間は、種まきもできないし、収穫もありません。
7. それでも私たち一族が滅びず、やがて大きな国になることができるように、神様が私をここに遣わされたのです。
8. そうです。 決して兄さんたちのせいではありません。 神様のお導きです。 神様は私を王の顧問にし、この国の総理大臣にしてくださいました。
9. さあ、急いでお父さんのところへ帰り、伝えてください。 『ヨセフは無事で、こう申しております。 「神様が私をエジプトの総理大臣にしてくださいました。 すぐこちらへ来てください。
11-12. いっさいの面倒は私が見ます。 まだききんは五年も続くのですから、もしエジプトに来なければ、一族は飢え死にするしかありません。」』 私にお任せください。 約束しますよ。 兄さんたちが証人です。 それにベニヤミンもな。
13. とにかくお父さんに、そう話してください。 私がエジプトでどんな権力を持っているか、何でも命令ひとつで思いどおりにできるのだということを、伝えてください。 お願いですよ。 早くお父さんの顔が見たいんです。」
14. こう言うと、ヨセフはベニヤミンを抱きしめて涙にくれるのでした。 ベニヤミンも泣きました。
15. 彼はほかの兄弟一人一人にも同じようにしました。 その時になって、ようやくみんなは口がきけるようになりました。
16. やがて王にも、「ヨセフ様のご兄弟がエジプトに来られたそうでございます」と知らされました。 王も役人たちも大喜びです。