9. もしその杯が見つかったら、遠慮はいりません。 犯人はどうぞ死刑にしてください。 ほかの者も、一生涯ご主人の奴隷になりましょう。」
10. 「それはけっこう。 だがそれまでしなくても、盗みの張本人だけ奴隷になればすむことだ。 ほかの者は帰ってよい。」
11. すぐさま袋をろばの背から下ろし、一つ一つ開けさせて、
12. 調べ始めました。 いちばん上の兄の袋から始めて、だんだん末の弟まで調べていきます。 とうとうベニヤミンの番になりました。 口を開けると、どうでしょう。 信じられないことですが、杯が入っているのです。
13. 一瞬、目の前が真っ暗になりました。 もうだめです。皆は絶望のあまり服を引き裂きました。 ろばにまた荷物を載せ、とぼとぼ引き返すよりしかたありません。
14. ユダと兄弟たちが戻ると、ヨセフはまだ家にいました。 一同は地面にひれ伏しました。
15. 「いったいどういう了見だっ! 盗みをすれば、すぐわかるのだぞ。」
16. ユダが恐る恐る答えました。 「ああ、どう申し上げたらよろしいのでしょう。 申し開きもできません。 私どもは無実でございます。 ですが、どうすれば、それをわかっていただけますでしょう。 きっと神様が私どもを罰しておられるのです。 いくらなんでも、弟一人をおいて行くわけにはまいりません。 兄弟みんなで戻ってまいりました。 どうぞ私どもを奴隷にしてください。」
17. 「それは許さん。 杯を盗んだ者だけが奴隷になればよい。 ほかの者は国の父のもとへ帰れ。」
18. その時、ユダが一歩前に進み出ました。 「恐れながら、ひと言だけ申し上げます。 なにとぞごしんぼうを……。 閣下は王様と同じように、今すぐにでも私を処刑することができるお方だということは、よく承知しております。