17. 「子やぎ一頭ではどうだ? あとできっと送ってやるから。」「送ってくれるったって、確かな保証がなきゃだめよ。」
18. 「それはもっともだ。 で、何が欲しいかね。」「そうね、印章と杖がいいわ。」 ユダは言われたとおりの品物を渡しました。 タマルは彼を家に引き入れ、一夜を共にしました。そして子供ができましたが、
19. そのあとはまた、いつものように未亡人の服を身につけました。
20. ユダは友だちのアドラム人ヒラに子やぎを届けてもらおうとしました。 そして、預けた品を取り戻すのです。 ところが、いくら捜しても、それらしい女は見つかりません。
21. ヒラは町の男たちの間を尋ねて回りました。 「ちょっとお尋ねしますが、村の入口の道ばたで客を取っていた女は、どこに住んでいるのでしょう。」「さあね、この辺じゃ、そんな女がいるという話は聞いたこともないね。」 同じ答えが返ってくるばかりです。
22. しかたありません。 ユダのところへ帰り、八方手を尽くして捜したが、女は見つからず、だれも心あたりのある者はいなかった、と伝えました。
23. 「それじゃあ、しかたがないな。 あの品物は女にやったと思えばいい。 できるだけのことはしたんだ。 またあそこへ戻ったりすれば、町中のいい笑い者になるだけだ。」 ユダもあきらめるしかありません。
24. さて、それから三か月ほどしたある日、義理の娘タマルに子供ができたという報告が届きました。 未亡人の身でいながら、ふしだらなことをしたに違いないというのです。「けしからん。 ここへ連れて来て焼き殺してしまえ。」 ユダはかんかんになって叫びました。
25. 人々はタマルの家へ押しかけ、外へ引きずり出そうとしました。 このままでは殺されてしまいます。 彼女は急いで義父にことづけを頼みました。 「この印章と杖の持ち主が、生まれて来る子供の父親です。 だれのものか、おわかりですね。」
26. ユダはひと目見て驚きました。 なんと自分がやった品物ではありませんか。 「私が悪かった。 タマルを責めるわけにはいかない。こうなったのもみな、私が息子のシェラと結婚させると約束しながら、それを守らなかったからだ。」 しかしユダは、彼女と結婚しませんでした。