6. 「あのね、ぼく、こんな夢を見たんだ。」 得意げに、ヨセフは言いました。
7. 「みんなが畑で束をたばねていたんだ。 そしたらぼくの束が、いきなりすっくと立ち上がった。 それからどうなったと思う? 兄さんたちの束が回りに集まって来て、ぼくの束におじぎをするんだ。」
8. 「じゃあ何かい、おまえがおれたちの主人になるとでもいうのかい?」 兄たちはせせら笑いました。 「いつものことだが、なんて生意気なやつだ。 だいいち、あの夢が気にくわない。」 そう思うと、ますます憎らしくなるばかりです。
9. ヨセフはまた夢を見て、兄たちに話しました。「この前また夢を見たんだけどさ、太陽と月と十一の星が、ぼくにおじぎしたんだぜ。」
10. 今度は父親にも話をしました。 父親はさすがに彼をしかりとばしました。「いったいどういうことかね。 母さんと兄さんたちだけでなく、わしまでが、おまえにおじぎをするのかね?」
11. 兄たちはくやしくてたまりません。 しかし、父親はいったいどういう意味なのかと、あれこれ考えあぐねるのでした。
12. ある日のこと、兄たちはシェケムへ出かけました。 羊の群れに草を食べさせるのです。
15. ところが、なかなか兄たちが見つかりません。 野原のあたりをうろうろしていると、一人の人に呼び止められました。「おまえさん、だれを捜してるのかね。」
16. 「兄と羊の群れです。 見かけませんでしたか?」
17. 「ああ、あの人たちか。 だったら、ここにはもういないよ。確かドタンに行くとか言ってたな。」 ヨセフはドタンまであとを追って行き、ようやく彼らを見つけました。
18. 兄たちも、まだ遠くにいるうちから、いち早く彼の姿を認めました。 ヨセフが一人でやって来る。 またとないチャンスです。 そこで、大へんな相談を始めました。 殺してしまおうというのです。