2. ところが、ヒビ人の部族長ハモルの息子シェケムは、ひと目見て彼女が好きになり、むりやり自分のものにしてしまいました。
3. 恋心は募る一方です。 なんとか彼女の愛を得ようと、手を尽くすのでした。
4. まず父親に頼みました。 「あの娘といっしょになりたいんだ。結婚できるように話をまとめてください。」
5. 事のいきさつはヤコブの耳にも入りましたが、その時、息子たちはみな群れの番をしに出かけていました。 ヤコブは、彼らが戻るまで、そのままにしておくことにしました。
8. ハモルの申し出はこうです。 「今度のことは、いいかげんな気持ちからじゃありません。 息子はほんとうにお宅の娘さんが好きなのですよ。 妻にいただきたいと心から願っております。 いかがなものでしょう。 二人の結婚をお許し願えないでしょうか。
18-19. ハモルとシェケムは喜んで提案を受け入れ、すぐさま言われたとおりにすることにしました。 シェケムはディナを深く愛していたので、この計画を町のほかの男たちに勧めるのは、少しも苦ではありませんでした。 それに、彼は人気があり、町の人たちから尊敬されていたのです。
20. ハモルとシェケムは町の議会で提案しました。
21. 「あの人たちは味方だ。 ここに住んでもらって、自由に商売してもらおうじゃないか。 土地は十分あるから心配ない。 彼らと親戚になったら、大いに有利だと思う。
22. ただ、そのためには一つだけ条件がある。 男はみな、彼らと同じように割礼を受けなければならないというんだ。
23. 簡単なことじゃないか。 ただそれだけで彼らのものは全部われわれのものになり、この土地も豊かになる。 どうだみんな、あの人たちがここに住めるように、この提案に賛成してくれないか。」
24. 全員が賛成し、割礼を受けました。
25. ところが、それから三日後、傷がまだ治りきらず、少しでも動けば痛くてたまらないころ、ディナの兄シメオンとレビが、剣を振りかざして町に攻め込んで来たのです。 何の反撃もできません。 一人残らず殺されてしまいました。
26. ハモルもシェケムも殺されました。 二人はディナをシェケムの家から取り返し、テントに連れ帰りました。
27. そのあと、ヤコブの息子が全員で町を略奪しました。 妹がそこで辱しめられたからです。
28. 町の中にある物も外にある物も、羊と言わず、牛と言わず、ろばと言わず何もかも奪い、
29. 女子供は捕虜にし、全財産を取り上げてしまいました。
30. そのやり方のひどさにヤコブはあきれ、レビとシメオンを責めました。 「おまえたちのおかげで、わしはすっかり憎まれ者になってしまった。 付近に住むカナン人やペリジ人は、わしのことを、さぞかし血も涙もないやつだと噂するだろう。 こんな小人数じゃ、連中に攻められたらひとたまりもない。」
31. 「じゃあお父さんは、妹が売春婦のように扱われてもかまわないんですか?」 二人も負けずにやり返します。