11. それから、ラケルにキスしました。あまりうれしくて気持ちが高ぶり、とうとう泣きだしたほどです。
12-13. そして、自分は彼女の叔母リベカの息子で、彼女には父方の従兄弟にあたる、と説明したのです。 ラケルはすぐ家へ駆け戻り、父親に報告しました。 ヤコブが来たのです。 すぐ迎えに行かなければなりません。 ラバンは取る物も取りあえず駆けつけ、大歓迎で家へ案内しました。 ヤコブは伯父に、今までのことをいろいろ語り、話は尽きません。
14. 「いやー、うれしいなあ。 甥のおまえがはるばるやって来てくれたんだからな。」 ラバンも喜びを隠せません。ヤコブが来てから、かれこれ一か月が過ぎたある日のこと、
15. ラバンが言いました。 「甥だからって、ただで働いてくれることはないよ。 遠慮するな。 給料はどのくらいほしいかね。」
16. ところで、ラバンには二人の娘がありました。 姉がレア、妹がラケルです。
17. レアは弱々しい目をしていましたが、ラケルのほうはスタイルもよく、なかなかの美人でした。
18. そんなわけで、ヤコブはラケルが好きになってしまったのです。 そこでラバンに言いました。 「もしラケルさんを妻にいただけるなら、七年間ただで働きます。」
19. 「いいだろう。 一族以外の者と結婚させるより、おまえにやるほうがいいからな。」
20. ヤコブは、ラケルと結婚したい一心で、七年間けんめいに働きました。 心から深く愛していたので、七年などあっという間でした。
21. ついに、結婚できる時がきました。「さあ、やることはみなやりましたよ。 約束どおりラケルをください。 彼女といっしょにさせてください。」
22. ラバンは村中の人を招いて大そうな祝宴を開き、ヤコブと喜び合いました。
23. ところがその夜、暗いのをさいわい、ラバンはレアをヤコブのところに連れて行ったのです。 ヤコブはそんなこととは露知らず、レアといっしょに寝ました。
24. ラバンはレアに、奴隷の少女ジルパを召使として付けてやりました。
25. 朝になりました。 ヤコブは目を覚まして隣を見ると、レアがいるではありませんか。 びっくり仰天してしまいました。憤まんやる方ありません。 ラバンのところへ行き、食ってかかりました。 「なんてひどいことをするんですかっ! ラケルと結婚したいばっかりに、ぼくは七年も骨身を惜しまず働いたんですよ。 そのぼくをだますなんて、いったい全体どういうことなんです、ええっ!」
26. 「まあまあ、気を落ち着けて。 悪かったが、私たちのところじゃ、姉より先に妹を嫁にやることはしないのだよ。
27. 一週間このままで我慢してくれたら、ラケルもやろう。 ただし、もう七年間ここで働いてもらうということにしてな。」 こううまく言い抜けられては、しかたありません。