1. イサクは年をとり、目がほとんど見えなくなりました。 そんなある日、長男のエサウを呼んだのです。「エサウかい?」「はい。 何ですか、お父さん。」
2-4. 「わしももう年だ。 いつお迎えが来るかわからない。 これから鹿を捕って来てくれないか。 わしの好きな鹿肉料理、知ってるな。 あの、実にうまい、何とも言えない味のやつだ。 あれを作って持って来てくれ。 死ぬ前に、長男のおまえを祝福したいのだ。」
5. ところが、二人の話をリベカが盗み聞きしていたのです。
11-12. 「だけどお母さん、そんなに簡単にだませやしませんよ。 第一、兄さんは毛深いのに、ぼくの肌はこんなにすべすべだ。 お父さんがさわったら、すぐばれてしまう。 そのあげく、お父さんはばかにされたと思って、祝福するどころか、のろうに決まってますよ。」
13. 「もしそんなことになったら、私が代わりにのろいを受けます。今は言うとおりにすればいいのよ。 さあ、何をぐずぐずしてるの。早く山羊を引いておいで。」
14. ヤコブは言われたとおりにしました。 連れて来た子やぎで、リベカは夫の好物の料理を作りました。
15. それから、家の中に置いてあったエサウのいちばん良い服を出して、ヤコブに着せました。
16. また、山羊の毛皮で手袋を作って渡し、首の回りにも毛皮を巻きました。
17. あとは、おいしそうなにおいのしている肉と焼き立てのパンを渡して、準備完了です。
18. ヤコブは内心びくびくしながら、皿を持って父親の寝室に入りました。「お父さん。」「何だね。 その声はエサウかい? それともヤコブかい?」
19. 「長男のエサウですよ。 お父さんのおっしゃるとおりにしました。 ほら、お父さんが食べたがってたおいしい鹿の肉ですよ。 床の上に座って食べてください。 そのあとで、ぼくを祝福してください。」
20. 「そりゃあまた、ずいぶん早く鹿をつかまえたもんだな。」「ええ、神様がすぐ見つかるようにしてくださったんですよ。」