10. 三人のうちの一人、神様が言いました。 「来年の今ごろわたしがまた来る時、おまえとサラの間に、男の子が生まれているだろう。」 サラはうしろのテントの入口で一部始終を聞いていました。
11. この時にはアブラハムもサラもすっかり年をとり、サラは、子供ができる時期はとうの昔に過ぎていたのです。
12. あまりばかばかしくて、サラは笑いをかみ殺すのがやっとでした。 「私みたいなおばあさんが、赤ん坊を産むだなんて」と、彼女は自分をあざけるようにつぶやきました。 「それにあの人だってもう年だし……。」
13. 神様はそれを聞きとがめ、アブラハムに言いました。 「なぜサラは笑ったのか。 なぜ『私みたいなおばあさんは赤ん坊なんか産めない』などとつぶやくのか。
14. 神にできない事は何もない。 おまえに言ったとおり、来年の今ごろまた来る時には、必ずサラに子供が生まれるようにしよう。」
15. サラはあわてて否定しました。 「笑っただなんて、とんでもございません。」 どうなることか、こわくてたまりません。 必死の思いでごまかしましたが、神様はちゃんとご存じでした。
16. このあと三人は腰を上げ、ソドムに向かいました。 アブラハムは見送りかたがた、途中までいっしょに歩いて行きました。
17. その時、神様は考えました。 「わたしの計画を、アブラハムに隠しておいて、いいだろうか。
18. アブラハムの子孫は大きな国になるのだし、世界中の国々が彼のおかげで祝福を受ける。
19. それに、わたしがこの男を選んで、神を敬う、正しく善良な者たちを起こそうとしたのだ。 約束は守らなければならない。」
20. そこで神様は、アブラハムに打ち明けました。 「ソドムとゴモラの住民が、すっかり悪に染まってしまったそうだ。 ずいぶんひどい事をしているという。
21. 今、その知らせが本当かどうか調べに行くところなのだ。 向こうに着けば、何もかもはっきりわかるだろう。」
22-23. ほかの二人は、そのままソドムへ向かいましたが、神様はしばらくの間、アブラハムといっしょにあとに残りました。 アブラハムは恐る恐る神様に近づきました。 「ちょっとお伺いしてよろしいでしょうか。 神様は正しい人も悪人も同じように殺してしまうおつもりですか。
24. もしあの町に正しい人が五十人いたとしても、それでも町を滅ぼされますか。 その人たちのために町を救おうとはなさらないのですか。
25. だとしたら、正義はどこにあるのでしょう。 悪人も正しい人もいっしょに殺してしまうなんてことを、神様がなさるはずはありません。 もしも、もしもそんなことをしたら、正しい人も悪人も全く同じ取り扱いをすることになってしまいます。 決してそんなことはなさらないでしょうね。 全地をさばかれるお方は、公平でなければならないのですから。」
26. 「わかった。 正しい人が五十人見つかったら、彼らのために町全体を救うことにしよう。」
27. 「ありがとうございます。 ですが、あともう少しお伺いしてよろしいでしょうか。 こう申し上げる私自身が、ちりや灰にすぎない者だということは、よく承知しております。
28. しかし、もし正しい人が四十五人しかいない時はどうでしょう。 五人足りないだけで、町を滅ぼされますか。」「四十五人いれば滅ぼすまい。」
29. 「では、四十人しかいなかったら?」「四十人でも。」