11. シリヤの王は首をかしげ、家来たちを呼んで、きびしく追及しました。 「この中に裏切り者がいる。 こちらの作戦を敵に通報している者がいるはずじゃ。」
12. 「陛下、私どもではございません。 預言者エリシャが、陛下が寝室でこっそりおっしゃることまで、イスラエルの王に告げているのでございます。」
13. 「そうか、では、そいつの居場所を突き止め、捕まえろ。」やがて、「エリシャがドタンにいる」という知らせが届きました。
14. そこで、ある夜、シリヤの王は戦車と馬で武装した大軍を差し向け、ドタンを包囲しました。
15. 翌朝はやく、預言者のしもべが起きて、外に出てみると、どうでしょう。 馬と戦車で固めた大軍が、ぐるりと取り巻いているではありませんか。思わず、大声で叫びました。 「ああ、だんな様ーっ。 ど、どうしたらよいでしょうか。」
16. 「恐れるな。 わしらの軍隊は彼らよりも多く、強いのだ。」
17. こう言って、エリシャは祈りました。 「神様、どうか、彼の目を開いて、見えるようにしてください。」 すると、神様が若者の目を開いてくださったので、火の馬と火の戦車が山の上に目白押しに並んでいるのが見えました。
18. シリヤ軍が攻め寄せて来た時、エリシャは、「神様、どうぞ、彼らを盲にしてください」と祈りました。 そのとおり、シリヤ軍の兵士たちは盲になったのです。
19. エリシャは出て行って、彼らに言いました。 「道をまちがえているぞ! 攻撃する町はここじゃない! わしについて来い。 おまえたちが捜している人のところへ、連れて行ってやろう。」 こうして、彼らをサマリヤへ連れて行きました。
20. サマリヤに着くと、「神様、彼らの目を開いて、見えるようにしてください」と祈りました。 目が見えるようになった時の、彼らの驚きようといったらありません。 事もあろうに、イスラエルの首都サマリヤにいるのですから。 みな目を丸くしました。
21. イスラエルの王は敵の兵士を見て、エリシャに尋ねました。「彼らを殺してもいいのですか。」
22. 「捕虜を殺すなど、とんでもないことです。 パンと水を与え、国に帰しておやりなさい。」
23. そこで王は、彼らのために盛大な宴をもうけてから、シリヤ王のもとへ送り返しました。 それからというもの、シリヤの略奪隊がイスラエルに侵入することは、ぴたりと止みました。
24. ところが、のちに、シリヤのベン・ハダデ王は、全軍を召集してサマリヤを包囲しました。
25. そのため、サマリヤの町はひどい食糧難にみまわれたのです。 包囲が長く続いたので、ろばの頭一つが一万五千円、鳩の糞○・五リットルが九百円で売られるほどになりました。
26-30. ある日、イスラエルの王が町の城壁の上を歩いていると、一人の女が、「陛下、お助けください!」と叫び求めました。「神様がおまえを助けてくださらないのに、わしに何ができよう。 食べ物もぶどう酒もやれんぞ。 それにしても、いったいどうしたのか。」「実は、この女が私に、『きょうはあなたの子供を食べ、あすは私の子供を食べましょう』と言ったのです。 それで、二人して私の子供を煮て食べました。 次の日、私が、『さあ、今度はあなたの子供の番よ』と言うと、この女は子供を隠してしまったのです。」なんということでしょう。 王はあまりのひどい話に、服を引き裂きました。 それを見ていた人々は、王が下に荒布をまとっているのを知りました。
31. 王は誓って言いました。 「きょう、わしがエリシャの首をはねないなら、神様がわしの首をはねてくださるように。」