14. 「何かしてやれることはないのかの」と、あとでエリシャがゲハジに尋ねました。「あの女には子供がありません。 それに、ご主人もかなりの年ですし……。」
15-16. 「もう一度、奥さんを呼んでくれ。」彼女が来ると、エリシャは、入口に立っている彼女に言いました。「来年の今ごろ、あなたに男の子が生まれます。」「ご、ごじょうだんでしょう。 預言者ともあろうお方が、私をおからかいになるのですか。」 彼女は思わず叫びました。
17. ところが、それはほんとうのことでした。 婦人はやがてみごもり、エリシャが言ったとおり、翌年の同じころに男の子を産んだのです。
18. その子が大きくなったある日、小作人といっしょに働いている父親に、会いに出かけました。
19. その時、子供はしきりに頭痛を訴え、苦しみ始めたのです。 父親は下男に、「抱いて母親のところへ連れて行け」と言いつけました。
20. その子は家へ連れ戻され、母親のひざに抱かれていましたが、昼ごろに息を引き取りました。
21. 彼女は子供をかかえて預言者のベッドに運び、戸を閉めました。
22. それから、夫に使いをやって、「どうぞ、下男にろば一頭をつけて寄こしてください。 急いで、あの預言者様のところへ行って来ます。」
23. 「どうしてまた、きょうなどと? 特別な祝日でもないのに。」「でも、どうしても行きたいのです。」
24. 彼女はろばに鞍を置くと、下男にこう言いつけました。 「うんと急いでおくれ。 私の指示のないかぎり、手綱はゆるめなくていいのよ。」
25. カルメル山に近づいて来る彼女を、エリシャは遠くから見つけ、ゲハジに言いました。 「見なさい。 あのシュネムのご婦人が来る。
26. さあ、走って行って出迎え、何があったのか聞いてみるのだ。 ご主人やお子さんはお元気かどうかもな。」彼女はゲハジに、「ありがとうございます。 別に変わりはございません」とだけ答えました。