2. 〔パウロがヘブル語で話すのを聞いて、人々はしーんと静まり返りました。〕
3. 「私はキリキヤの町タルソで生まれたユダヤ人ですが、エルサレムのガマリエル先生のもとで教育を受けました。 先生の門下生として、ユダヤのおきてと習慣には、特にきびしく従うように教えられました。 つまり、今の皆さん同様、こと神様に関する限り、人並み以上に熱心だったのです。
4. クリスチャンを迫害し、逃げる者たちを、どこまでも執念深く追い回し、男でも女でも手当たりしだいに縛り上げて投獄したり、殺したり……。
5. そのことは、大祭司様も、議会の議員の方々も証言してくださるでしょう。 この人たちに頼んで、ダマスコに住むユダヤ人の指導者あてに、クリスチャンを見つけしだい縛り上げ、処罰するためにエルサレムへ連行することを認めさせる手紙を、書いてもらったのですから。
6. ところが、もうじきダマスコという時、そう、あれはちょうど正午ごろでしたが、突然まばゆい光が、天からさっと私を照らしたのです。
7. 思わず倒れ伏した私の耳に、『パウロ、パウロ。 なぜわたしを迫害するのか』と呼びかける声が聞こえました。
8. 『そう言われるあなた様は?』と尋ねると、その声は『あなたが迫害しているナザレのイエスだ』と答えるではありませんか。
9. いっしょにいた人たちには、光は見えましたが、ことばはわかりません。
17-18. こうしてエルサレムに帰り、ある日、神殿で祈っていると、うつらうつら夢ごこちになり、神様の幻を見たのです。 神様は、『さあ、急いでエルサレムを離れなさい。 ここの人たちは、あなたがわたしの教えを伝えても信じないから』とおっしゃいました。
19. 私は答えました。 『主よ。 人々はかつて私がどこの会堂ででも、あなた様を信じる人たちを投獄し、むち打ったことを、いやと言うほど知っているのです。
20. しかも私は、あのステパノが殺された時には、それに賛成して現場に立ち合ったばかりか、石を投げつける連中の上着の番をしたのですよ。』
21. しかし神様はやっぱり、『さあ出発しなさい。 あなたを遠く、外国人のところへ派遣します』と言われるのです。」
22. ここまで話すと、人々はいっせいに叫びだしました。 「こんなやつは消しちまえっ! 生かしておくな。 殺せ、殺せーっ!」
23. あたりは興奮のるつぼです。 大声でわめく声、声、声……。 上着は宙に舞い、あちこちで、ちりをつかんでまき散らす者も出るしまつです。
24. どうしてこれほどの怒りを買うのでしょう。 その事情を知りたいと思った司令官は、パウロを兵営に引き入れ、むちで打って白状させようと思いました。
25. 兵士たちが縛り上げた時、パウロはそばに立っている士官に、「ローマ市民の私を、裁判にもかけずにむち打つのは、法律違反じゃないですか」と言いました。
26. これを聞いて、士官はあわてて司令官のところへ駆けつけ、「いかがいたしましょう。 あの男はローマ市民だと言っております」と耳打ちしました。
27. そこで司令官がじきじきに、問いただしました。「はっきりしろ。 おまえはローマ市民なのか。」「おおせのとおり、確かにローマ市民です。」
28. 「わしもローマの市民権を持っているが、ずいぶん金を積んだものだ。」「私は生まれながらの市民です。」
29. パウロを打とうと、そこに立っていた兵士たちは、ローマ市民だとわかったとたん、びっくりして手を引きました。 司令官も、知らなかったとはいえ、ローマ市民を縛ってむち打つように命令したので、ひどく不安になりました。最高議会で
30. 翌日、司令官はパウロの鎖を解き、祭司長たちに、ユダヤの最高議会の召集を命じました。 その場にパウロを連れ出し、騒ぎの原因を突きとめようと思ったのです。