1-2. それで「よーし、愉快にやろう。 思うぞんぶん楽しむことだ」と、ひそかに思いました。 ところが、こうした生き方も実にくだらないことがわかりました。 寝ても覚めても笑っていたら、頭がおかしくなったと思われます。 それが何の得になるのでしょう。
3. いろいろやってみてから、私は知恵を探求し続ける一方で、酒を飲んでみようと思いました。次に、もう一度考えを変えて、ばかになりきることにしました。 普通にいう幸福も味わってみよう、と思ったからです。
9. こうして、歴代のエルサレムの王もやらなかったような、あらゆることをやってみました。 両眼をしっかり見開いて、これらのものの価値を見極めようとしたのです。
10. 欲しいものは何でも手に入れ、したい放題の楽しみをしてみました。 つらい仕事にも大きな喜びがあることさえ知りました。 この喜びこそ、実に、あらゆる労働に共通した報酬なのです。
11. しかし、してきたことを振り返ってみると、どれもこれも役に立たないことばかりで、風をつかむようなものです。 これこそ価値があると言えるものなど、どこにもありません。
12. そこで、知恵と無知の価値を比較してみることにしました。 きっとだれでも、同じ結論に達すると思います。
13-14. それは、こういうことです。 光が暗やみより良いように、知恵は無知よりはるかに価値があります。 りこうな人は物事を正しく判断しますが、頭の悪い人は、先のことがわかりません。 ところが私は、りこうな人にも頭の悪い人にも共通点があることに気づきました。
15. 頭の悪い人が死ぬように、この私も死ぬのです。 だから、知恵をつけたって、いったいどうなるというのでしょう。 こうして、知恵をつけることでさえ空しいものだと悟りました。
16. りこうな人も頭の悪い人も死ぬのです。 時がたてば、両者とも、すっかり忘れられてしまいます。
17. ここまでくると、生きているのがいやになりました。 人生は不条理きわまりないからです。 何もかもばかげていて、風をつかむようなものです。
18. 一生懸命に築き上げたものが他人のものになると思うと、うんざりしてきました。
19. そればかりか、跡取り息子が馬鹿かりこうか、だれにわかるでしょう。 それでも、私の財産は何もかも、息子のものになるのです。 気分がめいることではありませんか。