1-2. ずっと昔、士師(王国設立までの軍事的・政治的指導者)がイスラエルを治めていた頃のことです。 イスラエルを大ききんが襲いました。 そのため、ベツレヘム出身のエリメレクは、家族ともどもモアブに移り住んだのです。 妻の名はナオミといい、二人の間にはマフロンとキルヨンという息子がいました。
3. ところが、モアブで暮らしている間にエリメレクは死に、ナオミと二人の息子があとに残されたのです。
8. しかし、帰郷の途について間もなく、ナオミは考えを変え、二人にこう言い聞かせました。 「ねえ、あんたたち、私について来るより実家へお帰り。 息子たちや私によくしてくれてほんとにありがとう。
9. いい再婚の相手が見つかるようにお祈りしてますよ。」 ナオミが別れの口づけをすると、二人はわっと泣きくずれ、涙ながらにすがりつきました。
10. 「そんなことおっしゃらないで、お願いですから、お義母様といっしょに行かせてください。」
11. しかしナオミは、首を横に振るばかりです。 「いいえ、いけません。 お里へ帰ったほうがしあわせですよ。 もうあたしには、あんたたちの夫になれるような息子がいないんだからね〔当時、夫に先立たれた嫁は、前夫の弟と結婚することになっていた〕。
12. さあ、里へお帰り。 私は今さら再婚できる年でもないし、かりに再婚して、今夜にでも身ごもって息子を産んだとしても、
13. その子が大人になるまで待てるもんじゃありませんよ。 そうでしょう。 もうあたしを苦しめないでちょうだい。 あんたたちにつらい思いをさせたことで、もうじゅうぶん神様から罰を受けたつもりですよ。」
14. 二人はまた、声をあげて泣きました。 それからオルパは、泣く泣くしゅうとめに別れの口づけをし、郷里へ帰って行きました。 しかしルツは、何としてもナオミのそばから離れようとしません。
15. 「ほら、オルパは里へ帰って行ったじゃないの。 あんたもそうおし。」
16. 「お願い、お義母さん、あたしを放り出さないで。 お伴させていただきたいんです。 お義母さんといっしょに暮らしたいんです。お嫁に来た以上、あたしもイスラエル人です。 イスラエルの神様はあたしの神様です。
17. どうかいつまでも、おそばにおいてください。 あたしたちを引き離すものは死だけですわ。 もしおそばを離れでもしたら、神様が、どんなにでも罰してくださいますように。」
18. ナオミは、ルツの決心が堅く、これ以上説得してもむだだと知ると、もう何も言いませんでした。