ルカによる福音書 8:26-46 リビングバイブル (JLB)

26.  こうして一行は、無事ガリラヤの対岸にあるゲラサ人の地方に着きました。 

27. 舟から上がると、この町に住む男が一人、イエスに会いに来ました。 長年、悪霊に取りつかれ、家もなく、裸のまま、墓場をねぐらにしている男でした。 

28. 男はイエスを見るやいなや、恐ろしい叫び声をあげて、その場に倒れました。 「やいやい、おれ様をどうしようってんだっ! いと高き神の子イエス様よ。 お願いだから、苦しめないでくれっ!」

29.  こうわめいたのは、イエスが悪霊に、出て行けとお命じになったからです。 今までは、悪霊が何度も男に取りつくので、鎖でしっかり縛りつけておくのですが、どんなに太い鎖でも、いつもやすやすと引きちぎり、荒野へ逃げてしまうのでした。 

30. 「あなたの名前は?」というイエスの質問に、悪霊は、「レギオン(ローマ軍の一軍団)だ」と答えました。 男には何千という悪霊が入り込んでいたからです。 

31. 悪霊どもは、底なしの穴に行くことだけはかんべんしてくれと、必死に願い続けました。

32.  うまいことに、近くの山の中腹で、豚の群れがえさをあさっています。 悪霊どもは、しめたとばかり、その豚の中に入らせてくれと頼みました。 イエスがお許しになると、 

33. すぐさまその男から出て、豚の中に入りました。 そのとたんです。 群れはいっせいに駆け降り、がけから湖に飛び込んで、おぼれ死んでしまいました。 

34. びっくりした豚飼いたちは近くの町に駆け込み、この出来事を言いふらしました。

35.  まもなく、大ぜいの人が、どやどや集まって来ました。 自分の目で確かめようと思ったのです。 と、どうでしょう。 今まで悪霊に取りつかれていた男が、きちんと服を着込み、すっかり正気に戻って、イエスの前に座っているではありませんか。 みんなは、あっけにとられてしまいました。 

36. 初めから一部始終を目撃していた人たちが、事細かにその時の状況を説明しました。 

37. それを聞くと、人々はますます恐ろしくなり、イエスに、ここから立ちのいて、もうこれ以上かかわり合わないでくれと頼み始めました。 それで、イエスは舟に戻り、また向こう岸へ帰って行かれました。 

38. 悪霊に取りつかれていた男は、ぜひにとお伴を願い出ましたが、イエスはお許しになりません。 

39. 「家族のところへ帰りなさい。 神がどんなにすばらしいことをしてくださったかを、話してあげるのです。」こう言われて、男は町中の人に、イエスのすばらしい奇蹟を話して回りました。イエス、娘を生き返らす

40.  ガリラヤに帰ると、イエスは心からの歓迎を受けました。 人々はおいでを待ちわびていたのです。

41.  その時、ユダヤの会堂管理人で、ヤイロという名の人が来て、イエスの足もとにひれ伏し、家においでくださいと願いました。 

42. 十二歳になる一人娘が、危篤状態だったのです。 熱心な頼みに、イエスは人垣をかき分けるようにして、ヤイロの家に向かわれました。

43-44. 途中で、一人の女が、いやされたい一心で、うしろからイエスにさわりました。 十二年もの間、出血の止まらない病気に悩まされ、どうしても治らなかったからです。 ところが、イエスの着物のふさにさわったとたん、出血は止まりました。

45.  イエスは、「わたしにさわったのはだれですか」とお尋ねになりました。 みんながめいめい自分ではないと答えた時、ペテロが口を出しました。 「先生。 わかりっこありませんよ。 回りにはこんなに大ぜいの人がひしめき合っているんですから……。」

46.  「いや、だれかがさわりました。 力が出て行くのを感じたのですから。」

ルカによる福音書 8