4. ピラトは祭司長や群衆のほうを向き、「この男には罪はないではないか」と言いました。
5. これを聞いて、人々は狂ったように叫びました。 「とんでもございません! こやつはガリラヤからエルサレムまで、ユダヤ全国、至る所で民衆をたきつけ、暴動を起こそうとしたんですよっ!」
6. そこでピラトは、「では、この男はガリラヤ人なのか」と尋ね、
7. 人々がそうだと答えると、イエスをヘロデ王のもとへ連行するように命じました。 ガリラヤはヘロデの支配下にあり、その時ヘロデは、ちょうどエルサレムに滞在中だったからです。
8. イエスに会えて、ヘロデは大喜びでした。 前々からイエスのうわさを耳にし、ぜひ一度、奇蹟を見たいものだと思っていたのです。
9. ヘロデはイエスを前にして、次から次へと質問をあびせました。ところがイエスは、きっと口をつぐみ、何一つお答えになりません。
32-33. イエスだけでなく、ほかにも二人の犯罪者が、「がいこつ」と呼ばれる場所で処刑されるために、引き立てられました。 刑場に着くと、いよいよ十字架刑です。 イエスは真ん中に、二人はその両側に……。
34. その時、イエスはこう言われました。 「父よ。 この人々をお赦しください。 自分たちが何をしているかわかっていないのです。」 兵士たちがさいころを投げて、イエスの着物を分け合うのを、
35. 群衆はそばで、おもしろそうにながめています。一方、ユダヤ人の指導者たちは、得意げにイエスをあざけりました。 「たいしたお人好しよ。 他人ばかり助けてやってよ。 このざまは何だ。 ほんとうに神様に選ばれたメシヤ(救い主)なら、自分を救ってみろ!」
36. 兵士たちも、酸っぱいぶどう酒を差し出しながら、皮肉たっぷりに、
37. 「よおよお、ユダヤ人の王様っ! ご自分を救ったらどうだい!」とからかいました。
38. 十字架のイエスの頭上には、「これはユダヤ人の王」と書いた罪状書きが、掲げてありました。
39. イエスの横で十字架につけられていた犯罪人の一人までが、「あんたメシヤ様なんだってなあ。 だったらよお、自分とおれたちを救ってもよさそうなもんだぜ。 ええっ、どうなんだいっ!」とののしりました。
40-41. しかしもう一人は、それをたしなめました。 「この期に及んで、まだ神様を恐れないのかっ! おれたちゃあ悪事を働いたんだから、殺されて当然さ。 だがよ、このお方はどうだ。 悪いことなんぞ、これっぽっちもしちゃおられないんだぜ。」
42. そして、イエスにこう頼みました。 「イエス様。 御国に入られる時、どうぞ、私を思い出してください。」
43. イエスはお答えになりました。 「あなたは今日、わたしといっしょにパラダイスに入ります。 約束します。」
44. その時です。 正午だというのに、突然、あたりが暗くなり、午後三時まで、そんな状態が続きました。
45. 太陽は光を失い、神殿の幕が、なんと真っ二つに裂けたのです。
46. その時イエスは、大声で、「父よ。 わたしの霊をおゆだねします!」と叫ばれたかと思うと、息を引き取られました。