11. この世の富も任せられない人に、どうして、天にある、ほんとうの富を任せることができるでしょう。
12. 他人の富に忠実でなかったら、あなたがたは自分の富さえ、任せてもらえないのです。
13. だれも、二人の主人に仕えることはできません。 一方を憎んで他方に忠実であるか、あるいは、一方を重んじて他方は軽んじるようになるからです。 神とお金の両方に仕えることはできないのです。」
14. 何よりもお金に目のないパリサイ人たちは、当然のことながら、この話を聞いて、イエスをあざけりました。
15. そんな彼らに、イエスは、おっしゃいました。 「あなたがたは、人前では、いかにも上品でうやうやしい態度をとっています。 しかし神は、あなたがたの悪い心をお見通しです。 いくら人の目をごまかし、賞賛を受けても、神には憎まれるのです。
16. バプテスマのヨハネが現われて教えを説き始めるまでは、モーセの律法と預言者たちのことば(旧約聖書)が、あなたがたの指針でした。 しかしヨハネ以後は、神の国のすばらしい知らせが宣べ伝えられ、大ぜいの人がむりにでも入ろうと、押し合いへし合いしています。
17. だからといって、おきてのどんな細かい部分も、効力を失ったというわけではありません。 たとい天地が滅びようと、神のおきてはびくともしないのです。
18. だから、妻を離縁してほかの女と結婚する者は、姦通罪を犯すことになり、離縁された女と結婚する者も同罪なのです。」
19. イエスは話を続けられました。「金持ちがいました。 きらびやかな服を着、ぜいたくざんまいの暮らしでした。
20. ある日のこと、その家の門前に、ひどい病気にかかったラザロというこじきが横になっていました。
21. 金持ちの家の食べ残りでもいい、とにかく食べ物にありつきたいと思っていたのです。 かわいそうに、犬までが、おできだらけのラザロの体をなめ回します。
22. やがて、このこじきは死にました。 御使いたちに連れられて行ったのは、生前神を信じ、正しい生活を送った人たちのところでした。 そこで、アブラハムといっしょにいることになったのです。 そのうち、金持ちも死んで葬られましたが、
23. 彼のたましいは地獄に落ちました。 苦しみあえぎながら、ふと目を上げると、はるかかなたに、アブラハムといっしょにいるラザロの姿が見えます。
24. 金持ちはあらんかぎりの声を張り上げました。 『アブラハム様ーっ! どうぞお助けを。 お、お願いでございまーす。 ラザロをよこし、水に浸した指先で、ほんのちょっとでも舌を冷やさせてください。 この炎の中では、もう苦しくて、苦しくてたまりません。』
25. しかし、アブラハムは答えました。 『思い出してもみろ。 おまえは生きている間、ほしい物はなんでも手に入れ、思うままの生活をした。 だがラザロはどうだ。 全くの無一物だった。 それで今は反対に、ラザロは慰められ、おまえは苦しむのだ。
26. それに、そちらへ行こうにも、間に大きな溝があって、とても行き来はできない。』
27. 『ああ、アブラハム様。 それならせめて、ラザロを私の父の家にやってください。
28. まだ五人の兄弟がいるのです。 彼らだけは、こんな目に会わせたくありません。 どうぞ、この恐ろしい苦しみの場所があることを、教えてやってください。』