3-4. この男は墓場に寝起きしていましたが、すごい強力で、手かせ足かせをはめられても、たちまち引きちぎって逃げてしまうのでした。そんなわけで、だれもこの男を取り押さえることができません。
22. そこへ、その地方の会堂管理人で、ヤイロという名の人が来て、イエスの前にひれ伏しました。
23. 娘を助けてほしいというのです。「先生。 娘が危篤なんです。 まだ、ほんの子供なのに……。 どうぞ、娘の上に手を置き、治してやってください。」
24. 必死の願いに、イエスはヤイロといっしょに出かけました。 群衆は押し合いへし合い、イエスについて行きました。
25. さてその中に、出血の止まらない病気で十二年間も苦しみ続けてきた女がいました。
26. 大ぜいの医者にかかり、さんざん苦しい目に会い、治療代で財産をすっかり使い果たしてしまいましたが、病気はよくなるどころか、悪化する一方でした。
27. イエスがこれまでに行なったすばらしい奇蹟の数々を耳にした彼女は、人ごみにまぎれて近づき、背後からイエスの着物にさわりました。
28. 「せめてこの方の着物にでも手を触れさせていただけば、きっと治る」と考えたからです。
29. さわったとたん、出血が止まり、彼女は病気が治ったと感じました。
30. イエスはすぐ、自分から病気を治す力が出て行ったのに気づき、群衆のほうをふり向かれて、「今、わたしにさわったのはだれですか」とお尋ねになりました。
31. 「こんなに大ぜいの人がひしめき合っているのですよ。 それなのに、だれがさわったのかと聞かれるのですか。」弟子たちはけげんな顔で答えました。
32. それでもなお、イエスはあたりを見回しておられます。
33. 恐ろしくなった女は、自分の身に起こったことを知り、震えながら進み出てイエスの足もとにひれ伏し、ありのままを、正直に話しました。
34. イエスは言われました。 「あなたの信仰があなたを治したのですよ。 もう大丈夫です。 いつまでも元気でいるのですよ。」
35. こう話しておられるうちに、ヤイロの家から使いの者が来て、娘は死んでしまったので、来ていただいても手遅れだと伝えました。
36. しかしイエスは、ヤイロに言われました。 「恐れてはいけません。ただわたしを信じなさい。」
37. イエスは、群衆をその場にとどまらせ、ペテロとヤコブとヨハネのほかは、だれにもついて行くことをお許しになりませんでした。
38. ヤイロの家に着くと、だれもかれもが取り乱し、大声で泣いたり、わめいたり、たいへんな騒ぎです。 これを見たイエスは、
39. 中に入られ、「なぜ、泣いたり、わめいたりしているのですか。 子供は死んだのではありません。 ただ眠っているだけです」と言われました。