31. また、モーセの法律では、『離縁状を手渡すだけで、妻を離縁できる』とあります。
32. しかし、わたしは言いましょう。 だれでも、不倫以外の理由で妻を離縁するなら、その婦人が再婚した場合、彼女にも、彼女と結婚する相手にも姦淫の罪を犯させることになるのです。
33. さらに、モーセの法律では、『いったん神に立てた誓いは、破ってはならない。 どんなことがあっても、みな実行しなければならない』とあります。
34. しかし、わたしは言いましょう。 どんな誓いも立ててはいけません。 たとい『天にかけて』と言っても、神に誓うのと同じです。 天は神の王座だからです。
35. 『地にかけて』と言ってもいけません。 地は神の足台だからです。 また『エルサレムにかけて』と言って誓ってもいけません。 エルサレムは大王である神の都だからです。
36. 『私の頭にかけて』と言って誓ってもいけません。 あなたがたは髪の毛一本さえ白くも黒くもできないからです。
37. ただ『はい、そうします』とか、『いいえ、そうしません』とだけ言いなさい。 それで十分です。 誓いを立てることで約束を信じてもらおうとするのは、悪いことです。
38. モーセの法律では、『人の目をえぐり出した者は、自分の目もえぐり出される。 人の歯を折った者は、自分の歯も折られる』とあります。
39. しかし、わたしはあえて言いましょう。 暴力に暴力で手向かってはいけません。 もし右の頬をなぐられたら、左の頬も向けてやりなさい。
40. 借金のかたに下着を取り上げようとする人には、上着もやりなさい。
41. 荷物を一キロ先まで運べと命令されたら、二キロ先まで運んでやりなさい。
42. 何か下さいと頼む人には与え、借りに来た人を手ぶらで追い返さないようにしなさい。
43. 『隣人を愛し、敵を憎め』とは、よく言われることです。
44. しかし、わたしは言いましょう。 敵を愛し、迫害する人のために祈りなさい。
45. それこそ、天の父の子供であるあなたがたに、ふさわしいことです。 天の父は、悪人にも善人にも太陽の光を注ぎ、正しい人にも正しくない人にもわけ隔てなく雨を降らせてくださいます。
46. 自分を愛してくれる人だけを愛したからといって、取り立てて自慢できるでしょうか。 ならず者でも、そのくらいのことはしています。
47. 気の合う友達とだけ親しくしたところで、ほかの人とどこが違うと言えるでしょう。 神を信じない人でも、そのくらいのことはします。