34. 「とんでもございません。 わしゃもう、あまりにも年をとりすぎておりますわい。
35. 八十にもなっては、余命いくばくもございません。 ごちそうやぶどう酒の味も、わからんようになっとります。 余興も楽しゅうはございません。 足手まといになるばかりでございます。
36. ただ、ごいっしょに川を渡らせていただければと思いましてな。 これほど名誉なことは、ございますまい。
37. そうしたら戻りますわい。 両親の墓のある故郷で死にとう存じます。 で、ここに控えておりますのがキムハムと申しますが、これにお供をさせていただけませんかな。 どうか、わしの代わりに面倒を見ていただきとう存じます。」
38. 「それはいい。 キムハムとやらを連れてまいろう。 ご恩返しのつもりで世話させていただきますぞ。」
39. こうして、全員が王とともにヨルダン川を渡り終えました。 ダビデから祝福の口づけを受けると、バルジライは家路につきました。
40. 王はキムハムを伴って、ギルガルへ向かいました。 ユダの大多数とイスラエルの約半数が、ギルガルで王を出迎えました。
41. ところが、イスラエルの人々は、ユダの人々だけが王とその家族の川越しに立ち会ったことに腹を立て、王に抗議したのです。
42. ユダの人々は答えました。 「どうして、そんなにこだわるのだ。 王はわしらの部族のご出身だぞ。 何も文句を言われる筋合いはない。いったい王がどうされたっていうんだ。 特別、わしらを養ってくださったわけでなく、贈り物をくださったわけでもないのだ。」
43. しかし、イスラエルの人々はおさまりません。 「イスラエルには十部族もあるんだぞ。 つまり、おまえたちの十倍も、王に対しては権利があるんだ。 それなのに、どうして、わしら全員を呼んでくれなかったのだ。 そもそも、今度の王位返り咲きを言いだしたのは、わしらだぞ。 わかっているだろうな。」こうして議論がふっとうし、ユダ側も激しく応酬しました。