11. ヨアブは、「な、なんだと! やつを見つけしだい、どうして殺さなかったのだ。 たんまり褒美を取らせ、将校にでも取り立ててやったのに」と、詰め寄りました。
12. 「どれほどご褒美がいただけましょうとも、そんなことはごめんです。 私どもはみな、陛下が指揮官のお三方に『わしに免じて、若いアブシャロムに手を下すのだけはやめてくれ』とお頼みになったのを、聞いたんですから。
13. それに、もし私が命令に背いて王子様を殺したとして、その張本人が陛下に知れた場合、将軍、あなた様が真っ先に、私を非難なさるんじゃありませんか。」
14. 「たわ事を言うな!」 こう言い捨てると、ヨアブは三本の槍を取り、宙づりになったままで息も絶え絶えの、アブシャロムの心臓を突き刺しました。
15. ヨアブ直属の若いよろい持ち十人も、アブシャロムを取り巻き、とどめを刺しました。
16. ヨアブはラッパを吹き鳴らし、イスラエル軍追撃をやめて、兵を引き揚げました。
17. 一行はアブシャロムの死体を森の深い穴に投げ込み、石を山のように積み上げました。 イスラエル軍兵士は、てんでに家へ逃げ帰りました。
18. 生前アブシャロムは、王の谷に自分の記念碑を建てていました。 「私には跡取りの息子がいないから」と述懐していたそうです。 彼が「アブシャロムの記念碑」と名づけたそれは、今も残っています。
19. ツァドクの子アヒマアツが申し出ました。 「この吉報を陛下にお伝えする役目を、ぜひとも私に仰せつけください。 神様が敵アブシャロムの手から救い出してくださったのですから。」
20. 「いかんいかん。 王子が死んだことなど、良い知らせとは言えん。 おまえには、また別の機会に働いてもらうよ。」
21. こう言うと、ヨアブは一人のクシュ人に命じました。 「さあ、行ってくれ。 見たとおりを陛下にお知らせするのだ。」 男はヨアブに一礼すると、すぐ走りだしました。
22. それでも、アヒマアツはあきらめません。 「どうか、私も行かせてください」と、必死にヨアブにすがります。「困ったやつだな。 今は、おまえの出る幕じゃないんだ。 もう何もお知らせすることはないぞ。」
23. 「わかっております。 でも、とにかく行かせてほしいんです。」あまりの熱心さに、ついにヨアブも、「まあ、いいさ。 そんなに行きたきゃ、行け」と折れました。 するとアヒマアツは、平原を通り抜けて近回りをし、例のクシュ人よりも先に着いたのです。
24. ダビデは町の門のところに腰かけていました。 見張りが城壁のてっぺんのやぐらに上ると、ただ一人で駆けて来る男の姿が、目に入りました。