1-2. 神様は預言者ナタンを遣わし、ダビデにこんな話を聞かせました。「ある町に二人の人がおりました。 一人は大金持ちで、たくさん羊や山羊を持っていました。
3. もう一人はとても貧乏で、財産といえば、苦労してやっと手に入れた、雌の子羊一頭だけでした。 その子羊を、子供たちも大そうかわいがり、食事の時など、彼は自分の皿やコップにまで口をつけさせるほどでした。 まるで実の娘みたいに、しっかり腕に抱いて寝るのでした。
4. そんなある日、金持ちのほうに客が一人ありました。 ところが、客をもてなすのに、自分の群れの子羊を使うのは惜しいとばかり、貧しい男の雌の子羊を取り上げ、それを焼いてふるまったのです。」
5. ここまで聞くと、ダビデはかんかんに腹を立てました。 「生ける神様に誓うぞ。 そんなことをする奴は死刑だ!
6. 償いもさせろ。 貧しい男に子羊四頭を返すのだ。 なにしろ、盗んだだけでなく、そいつには、まるであわれみの心というものがないんだからな。」
7. すると、ナタンはダビデに言いました。 「陛下です。 陛下こそ、その大金持ちなのです! イスラエルの神様は、こう仰せられます。 『わたしはおまえをイスラエルの王とし、サウルの迫害から救い出してやった。
8. そして、サウルの宮殿や妻たち、イスラエルとユダの王国も与えてやったではないか。 なお足りないというなら、もっともっと多くのものを与えてやっただろう。
9. それなのに、どうして、わたしのおきてをないがしろにして、こんな恐ろしい罪を犯したのか。 おまえはウリヤを殺し、その妻を奪ったのだ。
10. よいか、これからは殺害の恐怖が常におまえの家を脅かす。 ウリヤの妻を奪って、わたしの顔につばするようなまねをしたからだ。
11. はっきり言っておく。 このしわざの報いで、おまえは家族の者から背かれる。 また、妻たちはほかの者に取られる。 男たちが白昼公然と、彼女たちのところに入って寝るだろう。
12. おまえは人目を忍んで事を行なったが、わたしは全イスラエルの目の前で、おまえをこんな目に会わせよう。』」
13. 「私は神様に罪を犯しました」と、ダビデはナタンに告白しました。ナタンは答えました。 「そのとおりだ。 しかし、神様はその罪を赦してくださった。 だから、罰を受けて死ぬことはない。
14. ただし、神に敵する者たちに、神様をあなどる絶好の機会を与えたので、生まれてくる子供は死ぬ。」
15. こののち、ナタンは家へ戻りました。 神様は、バテ・シェバが産んだ子を、重い病気にかからせました。
16. ダビデはその子が助かるように祈り求め、断食して、一晩中、神様の前で地にひれ伏していました。
17. 国の指導者たちは、身を起こして、いっしょに食事をとるよう、しきりに頼みましたが、頑として聞き入れません。
18. 七日目に、赤ん坊はとうとう息を引き取りました。 側近の者は、そのことをダビデに告げるのをためらいました。「陛下は、あのお子が病気になったことで、あんなにおこころを乱された。 亡くなったと聞いたら、いったいどうなさるだろう」と心配したのです。
19. しかしダビデは、ひそひそ話し合っている彼らの様子から、何が起こったかを悟りました。「赤ん坊は死んだのか。」「はい、お亡くなりになりました。」