10. こうしてペリシテ人は、総力をあげて戦ったので、またもイスラエルは敗れてしまいました。 その日のうちに、ひどい伝染病が発生し、三万人が死に、生存者はほうほうのていで、めいめいのテントへ逃げ帰りました。
11. おまけに神の箱まで奪われ、ホフニとピネハスも殺されたのです。
12. 同じ日、一人のベニヤミン人が戦場から駆けつけ、シロにたどり着きました。 何か悲しいことがあったのでしょう。 男の服は裂け、頭には土をかぶっています。
13. エリは道のそばに設けた席で、戦況報告を今か今かと待っていました。 というのも、神の箱のことが心配だったからです。 到着した前線からの使者が町中に一部始終を知らせると、人々はこぞって泣き叫びました。
14. 「この騒ぎは、いったい何じゃ」と、エリはいぶかりました。その時、例の使者がエリのもとへ駆けつけ、すべてを報告したのです。
15. エリは九十八歳で、目も見えなくなっていました。
16. 「たった今、戦場から戻りました。 きょう、戦場を発って来たのです。
17. わが軍はさんざん痛めつけられ、幾千もの兵を失いました。 ホフニ様とピネハス様もご討ち死に……。 それに、神の箱まで奪われてしまったのです。」
18. 神の箱のことを聞いたとたん、エリはその席から門のわきに仰向けに倒れ、首の骨を折って死んでしまいました。 年老いていた上に、太っていたからです。 エリは四十年間、イスラエルをさばいたことになります。
19. さて、エリの嫁にあたるピネハスの妻は、出産間近でしたが、神の箱が奪われ、夫としゅうとが死んだという知らせを聞いて、急に陣痛にみまわれました。
20. 瀕死の彼女に、世話役の女たちが、「気をお確かに。 お産は軽くて、男の子ですよ」と励ましました。 しかし、彼女には答える気力もありません。
21-22. しばらくして、力なくつぶやきました。 「名前は『イ・カボデ』よ。 イスラエルから栄光が去ったから。」 イ・カボデは「栄光が去る」という意味です。神の箱を奪われ、夫としゅうととを亡くしたので、彼女はそう名づけたのです。