3. ところで、何か食べる物はないでしょうか。 パン五つでも、何かほかの物でもいいんですが、いただけましたら……。」
4. 「それが、あいにく普通のパンを切らしておりましてね。 あるのは供え物のパンだけですよ。 もしお供の若者たちが女と寝たりしていなければ、それを差し上げてもかまわんのですがね……。」
5. 「ご心配なく。 遠征中は、むちゃなまねはさせていませんから。普通の旅でも、身を慎むことになっているんです。 まして、今回のような場合は、なおさらですよ。」
6. そこで祭司は、ほかに食べ物がなかったので、供え物のパンをダビデに恵んでやりました。 神の天幕の中に供えてあったパンです。 ちょうどその日、できたての新しいパンと置き替えたばかりでした。
7. たまたま、その時、サウル王の家畜の管理をしているエドム人ドエグが、きよめの儀式のために、そこにいました。
8. ダビデはアヒメレクに、槍か剣はないかと尋ねました。 「実は、あまりにも急を要するご命令だったもんですから、取るものも取りあえず、大急ぎで出かけて来たんですよ。 武器も持って来なかったしまつです。」
9. 「それはお困りでしょう。 実は、あなた様がエラの谷で打ち殺した、あのペリシテ人ゴリヤテの剣があるんですよ。 布に包んで押し入れにしまってあります。 武器といえばそれだけですが、よろしかったら、お持ちください。」「それはありがたい。 ぜひ、いただこう。」
10. ダビデは急いでいました。 サウル王の追跡の手が伸びているかもしれません。 早くガテの王アキシュのもとにたどり着きたかったのです。
11. ところが、アキシュの家来たちは、ダビデの出現を喜ばないふうで、「あの人はイスラエルの最高首脳ではないか」とうわさしていました。「いやあ、確かにそうだ。 だれもが踊りながら、『サウル王が殺したのは千人で、ダビデが殺したのは一万人』とか歌って、ほめそやした人に違いないぞ。」
12. ダビデはこんな話をもれ聞いて、アキシュ王が自分をどう扱うかわからないと心配になりました。
13. それで、気違いのふりをすることにしたのです。 戸をかきむしってみたり、ひげによだれをたらしたりしたものですから、