8. これを聞いて、王が腹を立てないはずはありません。 「何だと。ダビデは一万人で、このわしは千人ぽっちなのか。 まさか、あいつを王にまつり上げる気じゃなかろうな。」
9. この時から、王の目は、ねたみを帯びてダビデに注がれるようになりました。
10. 事実、翌日から、神様に遣わされた悩みの霊がサウル王に襲いかかりました。 すると、まるで狂人のようにわめき始めたのです。 そんな王の心を静めようと、ダビデはいつものとおり竪琴をかなでました。 ところが王は、もてあそんでいた槍を、
13. とうとう王は、ダビデを自分の前から退けることにし、職務も千人隊の長にまで格下げしました。 しかし王の心配をよそに、ダビデはますます人々の注目を集めるようになったのです。
14. ダビデのやることなすことは、みな成功しました。 神様がともにおられたからです。
17. ある日、王はダビデを呼んで言いました。 「わしはおまえに、長女のメラブをやってもよいと思っておる。 そのためにまず、神様の戦いを勇敢に戦い、真の勇士である証拠を見せてくれ。」 王は内心、「ダビデをペリシテ人との戦いに行かせ、敵の手で殺してしまおう。 わしの手を汚すまでもない」と考えたのです。
18. ダビデは答えました。 「私のような者が王家の婿になるなど、とんでもございません。 父の家系は取るに足りません。」
19. ところが、いよいよ結婚という段になると、王は娘メラブをメホラ人のアデリエルと結婚させてしまいました。
20. そうこうするうち、別の娘ミカルが、ダビデを恋するようになったのです。 それを知って喜んだのは王でした。
21. 「しめしめ。 あいつをペリシテ人の手で殺す機会が、また巡って来たわい」とほくそ笑みました。 さっそくダビデを呼びつけると、「今度こそ婿になってくれ。 末の娘をやろう」と言いました。
22. 一方サウル王は、ダビデにこう勧めるよう、家来たちにひそかに命じました。 「陛下はあなたを大そうお気に入りですよ。 わしらもみな、あなたを慕っております。 お申し出を受けて、婿になられたらいいじゃありませんか。」
23. ダビデは答えました。 「私のように名もない家の貧しい者は、逆立ちしたって、王女様を妻に迎えられるほどの仕度金は用意できませんよ。」
24. 家来たちがこのことを報告すると、
25. 王は答えました。 「ダビデに伝えてくれ。 わしが望んでおる仕度金は、ペリシテ人を百人殺して来ることだ。 敵に復讐してくれることこそ、わしの望みだ、とな。」 しかし、王の本心は、ペリシテ人との戦いでダビデが戦死するのを期待していたのです。
26. ダビデはこの申し出に喜びました。 そこで、期限がくる前に、
27. 部下を率いて出陣し、ペリシテ人二百人を殺して、その包皮を王に差し出したのです。 これでは、ミカルを与えないわけにはいきません。
28. 王は、神様がダビデとともにおられること、また、ダビデがどれほど民衆の信望を集めているかを、いやと言うほど思い知らされ、
29. ますますダビデを恐れるようになりました。 それで、以前にも増して、激しくダビデを憎むようになったのです。