2. エルカナには、ハンナとペニンナという二人の妻があり、ペニンナには何人もの子供があったのに、ハンナは子宝に恵まれませんでした。
3. エルカナの一家は、例年シロにある神の宮へ出かけ、天地の主である神様を礼拝しては、いけにえをささげていました。 当時の祭司は、エリの二人の息子ホフニとピネハスでした。
4. いけにえをささげ終えると、エルカナは、ペニンナと子供たち一人一人に贈り物をやり、盛大に祝いました。
5. 彼はだれよりもハンナを愛してはいましたが、一人分の贈り物しか与えるわけにはいきませんでした。 神様が彼女の胎を閉ざしておられたので、贈り物をしようにも子供がいなかったからです。
6. さらにやっかいなことには、ペニンナが、ハンナに子がないことをあれこれ意地悪く言い始めたのです。
7. 毎年、シロに来ると必ずそうなのです。 ペニンナはハンナをあざけり、笑い者にしたのです。 そのためハンナは、泣いてばかりいて、食事ものどを通らない有様でした。
8. 「ハンナ、どうした?」 エルカナは心配顔でのぞき込みました。「なぜ、食べないんだ。 子供がないからって、そんなにやきもきすることないじゃないか。 十人の息子よりも、私のほうが良くはないかね。」
9. シロ滞在中のある夜のこと、夕食後、ハンナは宮の方へ行きました。 祭司エリが、いつものように入口のわきの席に座っていました。
12-13. エリは、ハンナのくちびるが動くのに、声が聞こえないので、酔っているのではないかと思いました。
14. 「酔っ払っているんだろう。 早くさましなさい。」
15-16. 「とんでもございません、祭司様。 酔ってなんぞおりません。ただ、あんまり悲しいので、胸のうちを洗いざらい神様に申し上げていたのです。 どうか、酔いどれ女だなどとお思いにならないでください。」
17. 「そうか、よしよし。 元気を出しなされ。 どんなことかは知らんが、イスラエルの神様が、あんたの切なる願いをかなえてくださるようにな。」
18. 「ありがとうございます、祭司様。」 ハンナは晴れやかな顔で戻って来ると、食事をして元気になりました。
19-20. 翌朝、一家はこぞって早起きし、宮へ行ってもう一度神様を礼拝し、ラマへと帰ったのです。 エルカナはハンナと床を共にしました。すると、神様はハンナの願いを聞いてくださったのです。 やがて男の子が生まれました。 ハンナは「あれほど神様に願った子供よ」と言って、サムエル〔「神様にお願いした」の意〕という名をつけました。
21-22. 翌年、エルカナはペニンナとその子供たちだけを連れて、シロへ年中行事のお参りに出かけました。 ハンナが、「この子が乳離れしてからにしてくださいな。 この子は宮にお預けするつもりなんですの」と、同行を取りやめたからです。
23. エルカナはうなずきました。 「いいだろう。 おまえが一番いいと思うとおりにしなさい。 ただ、神様のおこころにかなうことがなされるように。」ハンナは、赤ん坊が乳離れするまで家で育てました。
24. そののち、ハンナとエルカナは、まだ幼いその子をシロへ連れて行ったのです。 同時に、いけにえとして三歳の雄牛一頭、小麦粉三十六リットル、皮袋入りのぶどう酒をも携えて行きました。
25. いけにえをささげ終えると、二人はその子をエリのところへ連れて行きました。
26. ハンナが申し出ました。 「祭司様。 私のことを覚えておいででしょうか。 かつて、ここで神様に祈った女でございます。
27. 子供を授けてくださいと、おすがりしたのです。 神様は願いをかなえてくださいました。