9. 「陛下。 あの四人は、エレミヤを井戸につり降ろすという、大それたことをしました。 町にはもう、パンはほとんどありません。 このままだと、彼は飢え死にします。」
10. すると王は、エベデ・メレクに、三十人を連れて行き、エレミヤが死なないうちに引き上げるようにと命じました。
11. エベデ・メレクはさっそく三十人の男たちを連れ、使い古した衣料が保管してある宮殿の倉庫へ行きました。 そこで見つけたぼろきれや着物をかかえ、エレミヤのいる井戸へ行き、綱に結びつけてつり降ろしました。
12. エベデ・メレクは、大声でエレミヤに言いました。 「ぼろきれをわきの下にはさみ、その上に綱を巻きつけなさい。」 エレミヤがそのとおりにすると、
13. 彼らは引き上げ、元いた宮殿の牢に帰しました。
14. ある日、ゼデキヤ王は使いを出して、エレミヤを神殿の通用門に呼びました。王は言いました。 「ぜひとも聞きたいことがある。 何事も隠し立てはならんぞ。」
15. 「ほんとうのことを申し上げたら、陛下は私を殺すに決まっております。 いずれにしても、陛下は私のことばに耳を貸すはずがございません。」
16. 王は、彼の造り主である全能の神様を指して、絶対にエレミヤに手をかけたり、そのいのちをねらう者に引き渡したりしないと誓いました。
17. そこでエレミヤは、王に言いました。 「イスラエルの神様である天の軍勢の主は、こう告げます。 もしおまえがバビロン軍に降伏するなら、おまえもおまえの家族も生きのび、しかも町は焼かれずにすむ。
18. だが、降伏することを拒むなら、町はバビロンの兵士によって焼き払われ、おまえは恐ろしい運命をたどる。」
19. 「だがな、余は降伏するのがこわいのだ。 バビロニヤ人は、先に投降したユダヤ人に余を引き渡すだろうし、そうなったら、どうなることかわかったものではないからな。」
20. ためらう王に、エレミヤは答えました。 「神様に従いさえすれば、彼らの手に落ちるようなことはありません。 おいのちは助かり、万事がうまく運びます。
23. ご家族はみな、バビロニヤ人の前に引き出されます。 陛下ご自身も同じ目に会います。 陛下はバビロン王に捕らえられ、町は焼け野原になります。」
24. これを聞いた王は、エレミヤに言いました。 「たとい口が裂けても、いま余に言ったことをだれにも話すな。
25. 家来どもが、会見のことを知って、話の内容を教えなければ殺すと脅したら、こう言うのだ。
26. ヨナタンの地下牢にいたら死ぬに決まっているので、そこへ送り返されないよう、王に嘆願したまでです、とな。」