1-2. さてその夜のこと、王はどうしても寝つかれません。 しばらく読書でもしようかと、書庫から王国の記録文書を持って来させました。読み進むうち、ある項目に目が行きました。 門の警備に当たっていた役人ビグタンとテレシュが企てた、王の暗殺未遂事件のところです。計画が未然に防げたのはモルデカイの手柄だとあります。
3. 王はそばにいた者に尋ねました。「このモルデカイに何かほうびを取らせたかな。」「何も取らせてはおりません。」
4. 「だれか外庭で勤務についている者はおらんか。」 王がこう言った時、例の絞首台にモルデカイをつるす許可を得ようと、ハマンが城の外庭にさしかかったところでした。
5. そこで家来は答えました。 「ハマン様がお見えです。」「ちょうどよい。 ここへ呼べ。」
6. ハマンが来ると、王はさっそく話を切り出しました。 「余の眼鏡にかなった者には、どんな栄誉を与えたらよいものかな。」ハマンは心のうちで思いました。 「きっと私のことだぞ。 私以外に、陛下が栄誉を与えたいと思う者などいるはずがないからな。」
9. そして、最も身分の高い貴族の一人にその人の世話をさせてください。 つまり陛下の服を着せ、ご愛馬に乗せ、くつわを取らせて通りを引いて行かせるのでございます。 その時、『陛下のおこころにかない、このような栄誉を賜わったのだ!』とふれさせてはいかがでしょう。」
10. 「名案じゃ!」 王は思わずひざを打ちました。 「大至急、王衣を持って来させ、余の馬を引いて来て、そのとおりにしてくれ。 果報者は宮廷務めのユダヤ人モルデカイだ。 よいな、いま言ったことを、そっくりそのまま実行するのだぞ。」