7. モルデカイの話から、いっさいの事情がはっきりしました。 ハマンが、ユダヤ人を殺すためには六十億円を国庫に納めてもよい、とまで言ったというのです。
8. モルデカイは、ユダヤ人殺しを命じる勅令の写しを渡し、エステルに見せてくれと頼みました。 そして、エステルみずから王の前に出て、同胞のために命乞いするようにとことづけたのです。
9. ハタクはそのとおりエステルに伝えました。
10. エステルは困りました。 どうしたらよいのでしょう。 そこでもう一度、ハタクをモルデカイのもとへやりました。
11. 「この国では、お呼びもないのに王宮の内庭に入ったりすれば、男でも女でも即刻打ち首なのです。 陛下が金の笏を伸べてくだされば別ですけれど……。 それにもう一月も、陛下は私を召してくださいません。」
12. ハタクはエステルの苦しい心中を告げました。
13. しかし、モルデカイの答えはきびしいものでした。 「ユダヤ人がぜんぶ殺されるというのに、王宮にいるからといって、おまえだけが助かるとでも思うのか。
14. もしも、この事態をおまえが手をこまぬいて見ているなら、神様は別の人を用いてユダヤ人をお救いになるだろう。 だがいいか、おまえと一族だけは滅びると覚悟しておけ。神様がおまえを王妃となさったのは、ひょっとして、この時のためかもしれないのだぞ。」
15. 折り返し、エステルからの返事が届きました。
16. 「シュシャンにいるユダヤ人をぜんぶ集め、私のために断食させてください。 三日間、昼も夜も、飲み食いしないでください。 私も侍女もそういたしますから。 そのあと、国禁を犯してでも陛下にお目にかかるつもりです。 そのために死ななければならないのでしたら、いさぎよく死にましょう。」
17. モルデカイはエステルの言うとおりにしました。